
著者:渡辺 寛 / 出版社:カストリ出版 / 新書版 / 261P / ソフトカバー
昭和30年に刊行された、全国の売春地帯350箇所をルポタージュした唯一無二のガイドブックが60年の時を経て奇跡の復刊。戦後12年間のみ存在した、売春黙認地域「赤線」の実態が明らかにされるだけでなく、ガード下にうごめく「パンパン」や、裏家業である「青線」、風待ち港の伝統売春「おちょろ舟」などなど、圧倒的な情報量で戦後の性風俗を網羅。「泊まりズバリなら千八百円」(今里)「ただ女の部屋に天理教がまつってあるのが興ざめ」(高田)などなどいちいち、実践的教訓が綴られていて素晴らしい。章ごとにモーパッサンや石川啄木らの引用が挿入されるのもご愛嬌。ボーナストラックとして『赤線跡を歩く』シリーズの著者、木村聡へのロングインタビュー、新たに発掘された『全国女性街ガイド』の著者、渡辺寛氏の女性街ルポ「女体風土記」、若かりしころの著者によるプロレタリア小説『詫びる』まで付した丁寧すぎる仕事。戦後風俗を知る上で欠かせぬ貴重な資料となるでしょう。少部数刊行につき、比較的高価ですが、特定の読者にとってはそれだけの価値のある一冊です。