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著者:バリー・ユアグロー / 訳:柴田元幸 / 発行:ignition gallery / mm × mm / 44P / ソフトカバー
超短編の名手、バリー・ユアグローが都市封鎖状態のニューヨークにおいて「正気を保つために書いた」十二本の物語。翻訳者柴田元幸のもとに、約一月のあいだメールで届いたストーリーをほぼリアルタイムで翻訳、非常事態宣言中の日本において刊行するというスピーディーな展開で生まれた小冊子。
感染した人物が、徐々に美しく姿を変える「ボッティチェリ」と呼ばれる疫病の流行、人々を惑わすスクリーン上のノスタルジックなピクニックの映像、彫像を、墓石を、看板を次々と覆われ姿を変える町並み。重苦しい空気の中でみる悪夢のような、コロナ時代の寓話集。2020年春の世界はこんな風だった。読み返すたびに現実との境が曖昧になるであろうささやかながら忘れがたい一冊です。