

著者:若林 恵+Quartz Japan / 出版社:黒鳥社 / A5変型 / 552P / ソフトカバー
「世界を支えてきた大きなシステムが軋み始めると、「自分がやっている」と思っていたことが、実はシステムの慣性や惰性のなかで「やっている感」を出しているに過ぎないものであったことがよく見えてくる。そして、それが見えてしまえば、すべてがただのはりぼてにしか見えなくなる」
ビジネスメディア「Quartz Japan」の若林恵の人気連載をまとめた分厚い一冊。「気候テック」から「食卓のセキュリティ」まで毎回のトピックをめぐる自問自答を架空の対話形式で綴り、明快な答えではなく思索の紆余曲折そのものを開示。「論破」や一方向への「炎上」ばかりが目につく昨今、答えを急がず、正しさを争うわけでもない淡々とした語りにこそ発見と癒やしがある。幅広すぎるトピックの数々は以下。
■目次■
序文 そしてみんなはりぼてになった
#28 テクノナショナリズムの逆襲|デジタル空間にはクレオール化した摩訶不思議な領土がある
#29 気候テックの神話・上篇|グレタ・トゥーンベリが体現する新しい気候の神話はなぜ人を苛立たせるのか
#30 気候テックの神話・下篇|沈みゆく日本経済にとって再生エネルギーはチャンスであるはずが
#31 クールの再誕生|レスター・ヤングからNikeやAppleは何を受け継いだか
#32 食卓のセキュリティ|私たちは「食卓」というものの実態をまったく知らずにいる
#33 スポーツビジネスの陥穽|パンデミックは群集が密集する空間を決定的に変えてしまう
#34 働き手たちのアクティビズム|それは、これまでの「労使交渉」とはまったく異なるものなのだ
#35 ムービーシアターの絶滅|映画館はストリーミング化する映画産業のお荷物でしかないのか
#36 グローバルエコノミーのぐにょぐにょ|抑圧された「生きる欲求」が出口を求めてさまよっている
#37 ペットビジネスの反命題|ペットの「人格化」がペット産業の力学を破綻させる
#38 マインドフルネス・ビジネスの不安|会社が社員に瞑想アプリを無料で配布し始めたら要注意
#39 ホームリノベーションの効能・上篇|DIYで自分の環境を改善しようとする動きが活発化している
#40 ホームリノベーションの効能・下篇|私たちはいかに自分たちが暮らす「環境」に無自覚であったか
#41 海外旅行のエクスペリエンス|海外旅行に行く意味って何? いまこの問いに答えを見いだすのは難しい
#42 ジェフ・ベゾスの遺産|Amazonの評価は、人によって180度違っている
#43 デーティングアプリの黙示録|「自分が求めている相手」なんて本当に存在するのか
#44 ティックトックの訓戒|「バイラル」をキャリアにつなげるための新しい知恵
#45 テレヘルスの梃子|デジタルヘルスケアに真面目に取り組まない日本って
#46 ノンアルコールの希望|男性原理社会のドライバーとしての「飲み会」文化への鉄槌
#47 テスラの世界制覇|イーロン・マスクと中国のEVをめぐる蜜月の秘密
#48 ゲームストリーミングの心理的安全|ライブストリーマーはいかにエンタメの世界を更新しているのか
#49 リモートワークの是非・上篇|テック格差によって日本はアメリカの使いパシリになる
#50 リモートワークの是非・下篇|リモートワークで見えた「給与水準」をめぐる新しい論点
#51 室内のサステイナビリティ|オイルショックが建物にもたらした大転回を改めて検討しておこう
#52 スモールビジネスの希望・上篇|コーポレート・エコノミーの次に来るべきものとは
#53 スモールビジネスの希望・下篇|K-POPファンの「コンピテンシー」と新しい商人のかたち
#54 デジタル広告のオルタナティブ|カート・コベインとサードパーティ・クッキーの30年後の哀しみ
#55 フィジカルリテールの進化|リアル店舗は「あってもいい」ではなく「あったほうがいい」に
#56 バイオテックの革新|企業R&Dラボの終焉とアカデミック・アントレプレナーの興隆
#57 IPO の黒魔術|「ゾンビがいるから世界がまわる」という資本主義の残念な真実
#58 アフリカの優美|シャーデー・アデュのエレガンスはなぜいまも尊いのか
あとがき リック・ルービン、ありがとう