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著者:山口祐加・星野概念(対話に参加) / 出版社:晶文社 / 188mm × 130mm / 360P / ソフトカバー
「必要なのは、一人分の簡単で時短できるレシピ以上に、『料理をしてみようかな』という気持ちが湧き出てくるようなケア」
ある種現代的な料理スタイルである「自炊」について考え、手ほどきをし続けてきた「自炊料理家」である著者が、SNS上で呼びかけに応じた「自分のために料理が作れない」と感じる男女6人への自炊コーチの記録。
躁鬱の症状を持つ一人暮らしの女性、妻のためには食事を用意するけれど、テレワーク中に自分で食べるものを作るきになれない会社員。調理をしながらの取材対象との対話から、料理自体の面白さがわからない、労働に対する報酬の低さ、日々の生活スケジュールから生じる調理の困難さなどの問題が浮かび上がります。さまざまにこんがらがった毛糸をほぐすように、対話を続けていくうちに、自尊心や、思い込みなど、心の領域にまでその根っこを探っていくのが本書の特異さであり、面白さ。精神科医の星野概念を交えたインタビューでは、参加者と「自分のための料理」とのあいだに横たわる、母との関係、恋人との関係、精神疾患にまで話題が及びます。
この一冊で、料理のレシピの見え方、自分のために料理することへの捉え方が変わるかもしれません。