編者:井上迅 / 出版社:法蔵館 / 133mm × 188mm / 459P / ハードカバー
京都四条富小路の徳正寺住職を務める著者が、ある日六角堂(納骨堂)で発見した大伯母の日記。そこにはCOVID-19のパンデミックからちょうど100年前、日本中がスペイン風邪の猛威にさらされていた時期、若かりし彼女の暮らしぶりが綴られていました。1918年から1922年、米騒動やシベリア出兵などの国家的騒乱を背景に、ひとりの女学生が見た世界の有り様は、今を知り、生きるための重要な史料。そこに当時の出来事や、描かれたディティールへの注釈を事細かに加え、年表、藤原辰史、小林エリカ、磯田道史による寄稿、著者のコラム、さらには1922年の京都市全景パノラマ地図の復元挟み込みなどで構成した、非常に手の込んだ編集。膨大な参考文献とともに編み上げられた、日記と同程度、あるいはそれ以上のテキストの読み応えも、なんと「書容設計」(ブックデザイン)まで自身で手掛けた著者の、キャリアの長い古本歴ゆえ。ずっしりと重くも、美しい一冊です。