著者:奈倉有里 / 出版社:講談社 / 188mm × 131mm / 224P / ソフトカバー
「国の名前っていうのはたぶん、すごく頻繁に使われる枠組みだからこそ、こんなに近くで毎日一緒に学んでいる友達や自分をどこかに押し込めてしまって、そのせいでなにかが見えなくなるような、そういうものなのだ」(本文より)
『夕暮れに夜明けの歌を』の著者による待望のエッセイ。国名が名刺のように自分についてまわることに気を重くしながらも、「好き」を分かち合って仲間をつくったロシアでの留学生活、ロシア出身の先生に好きな季節は何かと聞いたら「梅雨」という、驚きながらも感動を覚えた回答から、白秋、アレクサンドル・ブローク、ニコライ・ザボロツキーなど雨をめぐる詩の断片、ウクライナ、カザフスタンなどに住む人とゲームのチャットで交わす日常や気候、時には戦争も話題にのぼる会話など。絶望しないために、そして自分を守るための「物語」を、どこまでもあたたかい言葉に込めた一冊。