
著者:スズキナオ / 出版社:太田出版/ 四六変型判 / 340P / ソフトカバー
暗くて静かな旅行記を書こう、と心に決めたのだった。大好きな『つげ義春日記』の、あの雰囲気が念頭にあった。(中略)一つひとつの旅はどれも短く、行った先の雰囲気をさっと撫でるように感じるだけでせいぜいという心許ないものだが、読み返してみるとどれも思い出深い。少なくともあのときの疲れた自分が手に取れるような本にはなった気がしている。疲れて何もしたくない誰かに取っていただけたら幸いだ。(「まえがき」より)
『深夜高速バスに100回ぐらいのってわかったこと』や『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』でおなじみ、大阪在住のライター、スズキナオ初の旅エッセイ集。
旅エッセイとはいえどもそこは著者のこと。東京の実家に立ち寄った帰り、ふと思い立って連絡をとった友人とその愛犬と、夜の公園で過ごしたという「蔵前のマクドナルドから」のように、些細ながらもかけがえのない記憶を「旅」に重ねて綴ります。
近くの旅館に泊まってみたり、映画『ハッピーアワー』の4人の面影に会いたくて有馬温泉に行ってみたり、「サイコロきっぷ」でふらっと電車に乗ってみたり。そうして行った先で人に出会い、話を聞く。言葉に出会い、考える。その概念自体考え直すきっかけを与えてくれる「旅」の本。