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文:オルガ・トカルチュク/ 絵:ヨアンナ・コンセホ / 翻訳:小椋彩 / 出版社:岩波書店 / A4変型 /
62P / ハードカバー
「「見る」ことよりも「見せる」ことに重きをおくとき、わたしたちは、出来事をじっさいに経験する可能性、繰り返されないそのときだけの印象を記憶する可能性を、みずから失しているのかもしれません。」(訳者解説『繰り返されないわたしについて』より)
あるところに、とても個性的な顔を持つ人がいた。通りすがりの人にさえ記憶され、愛されたその「個性的な人」の画像は、彼がスマートフォンを手にしからは、ネット上に氾濫。しかし、自撮りを繰り返すうち、その人の顔はぼやけていき、誰にも覚えられない「あの人」になってしまった。そうして深い絶望に沈んだその人は、ある行動に出る。
『逃亡派』でノーベル文学賞を受賞したポーランドの作家、オルガ・トカルチュクと、ヨアンナ・コンセホによる作品。二人による絵本は、『迷子の魂』に続き二作目。引用や仕掛けなどを多用した実験的な語り口は、トカルチュクの描くテーマをより強烈に読者に伝えます。
ソーシャルメディア社会における、アイデンティティの危うさを問う、SNSアカウントを持つすべての人に読んでほしい大人の寓話。
現在邦訳されているトカルチュク作品すべてを手がけた、小椋彩による訳者解説付き。