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著者:長嶋りかこ / 出版社:村畑出版 / 128mm×188mm / 240P / ソフトカバー
「子はたいてい、私の描く線をいいねと言ってくれるのだけど、私が引く線もその場所も、無意識さを意識したものが、見え透く。そんな後味の悪い線に、彼はいいねと言って線を繋げていく。そうすると、あっという間に私の知らない線になっていく。」
坂本龍一のジャケットからポーラミュージアムのCIまでを手掛けるグラフィックデザイナー、長嶋りかこによるエッセイ。
妊娠中から6年間iPhoneに書き溜めたというメモをもとに、デザイナーを生業とする母親という目線から見た社会のことを書き上げた1冊。妊娠中のままならない体をもって見える社会、子育てと仕事の両立をしながら見る社会には家父長的価値観と資本主義のレースと止まらぬ環境破壊とが一つの輪をなしている景色があった。そんな直線的で秩序だった世界から、かつては誰もが生きていた、柔らかい曲線的な世界へと子どもが連れて行ってくれる。ままならさを抱えて生きる人に読んで欲しい本。
自身のデザイン事務所内に新たに出版部門をつくり、装丁・デザインも著者自身が手がけた本書は、表紙には古紙・再生紙を、本文にははすでに生産が終了し廃棄対象となる可能性のある用紙を使用し、環境への負荷を軽減。文字と文字の間に空白をもつタイポグラフィと、カバーのない仕様には、”辿り着かない・辿り着けない”さまが表現されています。