
著者・発行:富田ララフネ / 文庫判 / 278P / ソフトカバー
「それがついに読み終わりそうで、しかしその読み終える前から、私はすでに『寓話』のことではない、もっと別のことを考えはじめていた。」(本文より)
小島信夫の『寓話』を少しずつ、少しずつ読みながら、著者の生活が記録されていく。すでに絶版となり、古書店でもそうそう手に入らないやっとのことで手に入れた『寓話』。1度目は読むことを中断し、2度目に手をつけ、あとがきまでたどり着く。
『寓話』の話をしようとしては、現在の生活、パートナーのQとのこと、家族とのこと、幼い頃のことへと話は広がり、現実の生活と小説の中の物語を行き来して記録は進んでいく。さらにプルーストの『失われた時を求めて』やミシェル・レリス『幻のアフリカ』など、『寓話』と同じく小説それ自体が持つ文章も、完成するまでの時間も「長い」小説も登場。著者が執筆期間に読んだ本が「参考文献」として巻末にまとめられている点もユニーク。